高知県高知市升形4-3 県庁前クリニックビル3階

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よくあるご質問

遺言・相続問題

先日父が亡くなりました。父は生前遺言を残しておりました。その遺言には、「高知太郎に遺産のすべてを相続させる」という条文があります。高知太郎は私の兄です。ところが父が死亡したとき、私の高知太郎は既に他界しており、兄の相続人として兄の息子が一人おります。この場合、私は遺産に対し、相続分を主張できるのでしょうか。

民法994条1項は「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」と定めております。そのため、特定の財産を第三者に遺贈した場合には、遺言の当該条項は効力を有さないこととなります。他方「相続させる」という遺言が遺産分割方法の指定と考えた場合について民法に規定はありません。この点に関して、判例(最高裁判所第3小法廷平成23年2月22日判決)は、本件と同様の事案において、遺贈の場合と同様に、当該規定は効力を有さない旨判示しました。すなわち、結果として「私」は遺産に関し法定相続分相当の割合で取得を主張できる結果となりました。

兄に全財産を残すという遺言を書いた際の父の意思を考えると、兄の子に遺産をすべて相続させる方が・・・とも言えます。どちらの結論が妥当かと難しいところです。遺言をする際には、自分より先に受遺者が亡くなるという事態も想定して、遺言に予備的な受遺者を加えておく方がいい場合があります。

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遺産分割の手続

亡くなった父の遺産について相続人の間でどのように遺産分割を進めたらいいでしょうか(遺産分割の流れ)。

被相続人が亡くなられた場合、以下のような流れで遺産分割が進みます。

① 相続人の調査(誰が相続人か。知らないうちに兄弟がいるというケースもある?)

② 遺言があるか(公正証書遺言については、相続人の方が各地の公証役場で存否を確認できます。高知の公証役場はこちら

すべての財産について遺言書で網羅されている場合には、遺産分割協議は必要ありません。

③ 亡くなった方の死亡時の財産調査(不動産、現金、預貯金、自動車、負債etc)

④ 財産の金銭評価

⑤ 法定相続分を修正する要素はあるか(特別受益寄与分など)

⑥ 当事者同士の話し合いと遺産分割協議書の作成

⑦ 話し合いができない場合は家庭裁判所で遺産分割調停

⑧ 遺産分割調停でも協議が整わない場合には遺産分割審判

という流れになります。

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遺産分割調停は、どこの家庭裁判所に申し立てたらよいですか(調停の管轄)。

遺産分割調停は、相手方のうちの一人の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所になります(裁判所の管轄はこちら)。そのため、あなたが東京に住んでいたとしても、相手方が高知県高知市に住んでいるときは、相手方が合意してくれない限り,高知家庭裁判所に調停を申し立てなければなりません。

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遺産分割調停とはなんですか。

遺産分割調停とは、家庭裁判所において、中立な調停委員(2人)や家事審判官の前で、遺産分割についての話し合いをする手続をいいます。家庭裁判所というと「裁判なんておおげさ!」という方もいますが、調停はあくまで話し合いで、訴訟などの裁判とは違うものと考えていただいて良いと思います。中立な調停委員の前で話ができ、相手方と直接顔を合わせることも少ないので、感情的にならずに話ができ、気楽に利用していただいて良い手続です。

また、裁判官に判断をしてもらいたい場合(遺産分割審判)でも、まずは遺産分割調停で当事者間で話し合いをしてもらうこととなっております(調停前置主義)。

 

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遺産分割審判とはなんですか。

遺産分割協議でも、遺産分割調停でも協議が整わない場合には、遺産分割審判で判断がなされます。

遺産分割審判では、裁判官である審判官が相続人それぞれの主張を聞き、遺産等の調査を行って公平な立場で判断をします。遺産分割調停で話し合いがつかない場合には、改めて申立てする必要はなく、自動的に審判に移行します。

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遺産調査について

亡くなった父(被相続人)の預金の取引履歴を過去に遡って調査することは出来ますか。

銀行などの金融機関は預金契約に基づいて預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負います。そして、預金者が亡くなった場合には、預金者の共同相続人の一人は他の共同相続人の協力がなくとも、一人で取引履歴の開示請求を行使することができます(最高裁平成21年1月22日)。

したがって、遺産相続に先立ち、被相続人の方の預貯金の使い道について疑問がある場合(他の相続人による使い込みなど)には、遡って預貯金の取引経過の開示を求めることができます。高知の金融機関でも相続人の1人が取引経過の開示を求めれば応じてくれてます。

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先月父がなくなりました。長い間父とは音信不通であり、父の所有している不動産がどこにどの程度あるかわかりません。何か調査する方法はありますか。

被相続人の所有していた不動産が存在するのか、存在するとして何筆何棟あるのかを調査する方法として、市役所や町役場の名寄帳を取得する方法があります。名寄帳は、市役所や町役場が、固定資産課税の管理のために作成している固定資産課税台帳の登録事項と同一の事項が記載されています。相続人であれば、被相続人の名寄帳を取得することができます。

あなたの場合でも、市役所または町役場に行って名寄帳を取得すれば、お父様の所有(共有)していた不動産を知ることができます。もっとも、各市町村の役場で取得できるものは、その市町村にある不動産のみですので、複数の市町村にまたがって不動産を所有している可能性がある場合には、それぞれの市町村で名寄帳を取得する必要があります。たとえば高知市、安芸市でそれぞれ不動産を所有している可能性があれば、高知市役所、安芸市役所でそれぞれ名寄帳を取得する必要があります。

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特別受益について

兄(共同相続人)は,死亡した父(被相続人)の生前に,父からマイホームの購入のために4000万円もの贈与を受けておりますが,父の相続においてこのことは一切考慮されないのですか(特別受益とは?)?

共同相続人の中に,被相続人から遺贈を受けたり,生前に贈与を受けたりした者がいた場合,相続に際して,これら遺贈されたものや生前贈与されたものを相続財産に加算して相続分を算定します(特別受益)。そして,贈与を受けた者の相続分は,このようにして算定された相続分から,贈与分を差し引いた額となります。

生前贈与が特別受益となるのは,「婚姻又は養子縁組のための贈与」,「学資」(教育費)及び「その他の生計の資本としての贈与」(居住用の不動産の贈与,営業資金の贈与など)です。

本件の場合も,お兄さんがお父さんから受けたマイホーム購入のための贈与は特別受益となります。

仮に,お父さんの死亡時の財産総額が1億円で,相続人があなたとお兄さんだけだった場合,4000万円をお父さんの死亡時の相続財産に加えると1億4000万円となり,それを2分の1すると7000万円となります。

したがって,

あなたの相続分=7000万円

お兄さんの相続分=7000万円-4000万円=3000万円

となります。

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死亡した父は,兄を受取人として生命保険に加入しておりました。兄の受け取った保険金は父の相続には影響しないのですか。

受取人を相続人とした生命保険の,死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,原則として特別受益とはなりません。

もっとも,判例は「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同上の類推同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持ち戻しの対象となると解するのが相当である。」(最判平成16年10月29日)としています。

どのような場合が,「民法903条の趣旨に照らして到底是認することができないほどに著しいもの」かは,個別の事情によりますが,受取人が相続人指定の生命保険は遺産分割に影響しないと安易に考えることはできません。

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寄与分について

私(相続人)は,母(被相続人)が倒れてから亡くなるまでの5年間,自宅で母の身の回りの面倒を看てきましたが,このことは私の相続分には一切影響しないのですか(寄与分とは?)

寄与分とは,相続財産の一定割合又は金額を相続財産から控除して,これを当該相続人が相続分とともに受け取る制度です。寄与した相続人があるときは,その相続人の取得する財産の額を増加させることになります。

もっとも,自宅で被相続人と同居し,家事の援助を行っている程度では,特別な援助をしたとは言えず,寄与分は認められません。

寄与分が認められるには,病気療養中で看護の必要性がある被相続人の療養看護を無償で継続的に行った場合や,被相続人と同居して衣食住の面倒を継続的にみていたなどといった事情が必要です。

あなたの場合も,これらの事情が認められるか否かで相続分が増えるか否かが決まります。

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同居している義父(夫の父)は自宅で療養し,私が看病しておりました。この度,義父が死亡し,夫と夫の兄弟が相続人となりました。遺産分割において,私が看病したことは考慮されないのでしょうか(寄与分権利者)。

寄与分の権利を有する者は相続人に限られ,相続人ではない相続人の配偶者,子,内縁の妻などは寄与分の権利を有しません。もっとも,このような人たちの寄与は,相続人の補助者又は代行者による寄与として相続人(本件では夫)の寄与分として考慮される場合があります。

したがって,本件でもあなたが看病したことによる寄与は,夫の寄与分として考慮される可能性はあります。

また,令和元年7月1日以降の相続に際しては,このようなケースで相続人の配偶者のように,相続人ではない親族が看病したようなケースにおいて「特別の寄与」と評価される場合には,特別寄与者として寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することが出来るようになりました(新民法1050条以下)。

 

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遺言について

先日父が亡くなりました。父は生前遺言を残しておりました。その遺言には、「高知太郎に遺産のすべてを相続させる」という条文があります。高知太郎は私の兄です。ところが父が死亡したとき、私の高知太郎は既に他界しており、兄の相続人として兄の息子が一人おります。この場合、私は遺産に対し、相続分を主張できるのでしょうか。

民法994条1項は「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」と定めております。そのため、特定の財産を第三者に遺贈した場合には、遺言の当該条項は効力を有さないこととなります。他方「相続させる」という遺言が遺産分割方法の指定と考えた場合について民法に規定はありません。この点に関して、判例(最高裁判所第3小法廷平成23年2月22日判決)は、本件と同様の事案において、遺贈の場合と同様に、当該規定は効力を有さない旨判示しました。すなわち、結果として「私」は遺産に関し法定相続分相当の割合で取得を主張できる結果となりました。

兄に全財産を残すという遺言を書いた際の父の意思を考えると、兄の子に遺産をすべて相続させる方が・・・とも言えます。どちらの結論が妥当かと難しいところです。遺言をする際には、自分より先に受遺者が亡くなるという事態も想定して、遺言に予備的な受遺者を加えておく方がいい場合があります。

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遺留分について

私は10年以上、母の介護をしてきました。母はそんな私の介護に感謝して私にその遺産のほとんどを相続させる旨の遺言を残して亡くなりました。母の相続人は私と妹の二人ですが、妹が、私に4分の1の遺留分減殺請求をしてきました。私の母への介護は、遺留分減殺請求の中では何ら考慮されないのでしょうか(遺留分と寄与分)

一般的に考えれば、あなたのお母様への献身的な介護を受けてなされた遺言についてはお母様の意思を尊重されるべきです。しかし、遺留分減殺請求では、寄与分についての規定が準用されていません(民法1044条は寄与分について定めた民法904条の2を準用していない)。そのため、あなたがお母様を介護していたこと(寄与分)は、遺留分算定の際には考慮されません。

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父の遺言により,私の遺留分が侵害されている可能性があるのですが,侵害されていることがはっきりするまで遺留分減殺請求はしない方がよいでしょうか(遺留分減殺(侵害額)請求権の行使期間)。

(令和元年6月30日までの相続の場合)

遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が,相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈のあったことを知った時から1年で時効により消滅します(旧民法1042条前段)。また,相続開始時(通常は被相続人の死亡時)から10年を経過すると同じく消滅します。

他方,遺留分減殺請求権を行使した結果生じた目的物の返還請求権等は時効により消滅しません。

(令和元年7月1日以降の相続の場合)

民法改正により,遺留分侵害額請求権となり,遺留分権利者が,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは,時効によって消滅します。

他方,遺留分侵害額請求権を行使した結果発生する債権に関しては,民法総則に従うことになるので,5年間は時効により消滅することは時効により消滅することはありません(新民法166条1項1号)。

(結論)

そうだとすれば,あなたが遺言により遺留分を侵害されているか不明な場合でも,その可能性がある場合には,念のため,遺留分減殺(侵害額)請求の意思を内容証明郵便等で受贈者等に伝えておいた方がよいでしょう。民法改正前であれば,遺留分減殺請求をした後の物件的請求等は時効により消滅しないし,民法改正後であっても,一旦侵害額の請求をしておけば,少なくとも5年間は時効により消滅しないことにことになります。したがって,調停を申し立てるか,訴訟を提起するかなどはその上でゆっくりと検討しても不都合はありません。

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高知に住む父が亡くなりました。父の法定相続人は私と兄だけですが、父は近くに住む兄にすべて相続させる内容の遺言を残しておりました。私は、兄に遺言とは関係なく遺産分割協議をしたい旨を申し入れておりましたが、兄は受け入れてくれません。そうこうしているうちに、遺言があることを知ってから1年が経過してしまいました。遺留分減殺請求権は消滅しまったのでしょうか。

相続人から受贈者に対する遺産分割協議の申し入れ、調停の申し立てに、遺留分減殺の意思表示が含まれるかという問題です。

この点、遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果や異なるので、原則として遺産分割協議の申し入れや、遺産分割調停の申し立てには、遺留分減殺の意思表示は含まれません。

もっとも、判例は、「被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合には、遺贈を受けなかった相続人が遺産の配分を求めるためには法律上、遺留分殺によるほかないのであるから、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれている」(最判平成10年6月11日)としています。この判例は遺産分割の申し入れに遺留分減殺の意思表示を含む一例を示すものですが、遺産のすべてがあなたのお兄さんに相続させる旨の遺言がなされているあなたの場合も、遺産分割協議の申し入れをしていれば、すでに遺留分減殺請求の意思表示がなされたと考えることができます。

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